JR上野駅Breakステーションギャラリーで行ったAS+RO個展『聴取と翻訳』のために制作した作品。作品を構成するものは、2台のスピーカーから流れる発話、その発話を通訳するための、通訳者・岩元望による筆記を撮影した映像、会場である上野駅の吹き抜け空間の図面である。言葉を用いた対話に対する疑わしさを発端とした本作品では、作者である添田・奥泉2名が、駅の吹き抜けに面したショーウインドウの中心からそれぞれ逆の向きで移動し、お互いの声が聴こえるように通話を繋ぎ、移動しながら知覚したものに対する端的な発話をしていくことを試みた。空間はほとんど左右対称形であることから、それぞれの発話はときに同じものについて話しているかのように一致する。しかし実際には、逆方向に移動していく身体が同じものを見ていることはない。録音されたそもそも噛み合うはずのない発話を、通訳者の手は正確に、聴き逃すまいとして記述し続ける。
制作 : AS+RO (担当: 添田)
音声出演 : 奥泉理佐子
添田朱音
映像出演 : 岩元望 (通訳者)