Dance Base Yokohamaで行われた上演と議論による企画、PORT : Performance or Theoryに向けて制作した作品。「20分間」という建築や展示では登場しない時間をどう扱うか、というところから構想をはじめ、作品の時間は現実の時間や空間といかに切り離されているのか、だれかの指示で行われた行為はだれのものなのか、を考察していった。会場にある4本の柱の内側に向いてついているコンセントに、それぞれレンジやトースターなど短い時間を計り取る電子機器を接続した。そして、20分間という短い時間を、6分と少しの上演を3回繰り返すものとしてさらに分割し、1回の上演ごとに出演者3人が、4本の柱に貼り出された12,3個の指示をこなしていくものとした。指示は、トースターでパンを焼く、パンを運ぶ、食べる、牛乳を温める、レンジを隣の柱に移動させるなどの所作で構成され、全ての指示を行うと、舞台の上の物の配置が、90°別の向きを向いてすべて元の位置に戻る。一連の指示をこなしたのち、出演者たちは役割をスイッチし、べつの方向に向けて全ての指示を再び繰り返す。現実の空間の向きとは無関係に、べつの方向に向けて作品の時間をもう一度再生することを試みながらも、実際には出演者の身体のなかで消化され続けるパンがあったり、牛乳によって体温の上がった身体があったりする。行為による影響はたしかに現実に起きているけれど、しれっと何事もないかのように時間を戻し、もう一度上演を繰り返す。
構想 : AS+RO (担当:奥泉)
制作 : 奥泉理佐子
出演 : 奥泉理佐子
小久保悠人
中川友香
写真提供 : Dance Base Yokohama
撮影 : tatsukiamano