JR上野駅Breakステーションギャラリーで行った個展。モニター2台を用いた一対の映像作品、字幕によるレクチャー映像、大判写真、段ボールによるモックアップで構成されている。COVID-19によって一般的になったビデオ会議における「他者の私室にとうとつに視覚だけの存在としてアクセスする」空間体験に着目し、従来、同じ道を歩き玄関を通過し靴を脱ぎ手を洗いタオルを使うなどの一連の動きを同様に行うことが、他者の私室にアクセスするための通過儀礼のようなものだったのではないかと考察した。それらの動きは、私室の持ち主にとっては視覚というよりも触覚的なものである。一対の映像は出演者2人の私室をzoomで繋いだものであり、私室でただ生活をする人と、相手の私室を画面に映る視覚情報のみで模倣し、段ボールやガムテープを用いてモックアップを作り続ける人を映している。粗雑に作られたモックアップは正確な奥行き情報を持たないが、形態を近づけることで、ふたりの身体の動きをわずかに類似させることがあるかもしれない。レクチャーは建築における私室の歴史を追いながら、私室が物の布置によって形作られていることを語るものであり、大判の写真作品では、粗い粒度のzoomと対照的に高解像度のレンズに対する緻密な室内の装飾を試みることで、空間の形態と装飾の関係や、内観とはどの距離からの視線に向けたものであるのかを思索した。
制作 : AS+RO、大村高広(建築設計・理論)
映像出演 :  大村高広
     添田朱音
映像文章 : 大村高広

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